オンラインシンポジウム 知的障害者の自立生活 これまでとこれから

「知的障害のある人の自立生活を考える会」は、知的障害のある人が、他の者と同様にどこで誰と生活するのかを選択できる社会の構築を目指して活動しています。

 当会およびその前身である「自立生活声明文プロジェクト」では、2017年より毎年シンポジウムや学習会、リレートークなどの企画を通じて、知的障害のある人が施設や親元を離れて地域で自立生活をする日本各地の実践事例の共有、そして全国の当事者や関係者がつながるプラットフォームづくりを行ってきました。

 本年度、当会では、2014年の「重度訪問介護」の重度知的障害への対象拡大という制度改革を切り口として、知的障害のある人の自立生活に関する運動の歴史を振り返り、いま現在の課題を共有し、そしてこれからの実践に向けて対話するオンラインシンポジウム〈知的障害者の自立生活 これまでとこれから〉を開催します。

日程|2025年3月1日(土)13:00-16:30(予定)

形式|ウェビナー(オンラインでの動画配信)

情報保障:パソコン文字通訳(パソコン文字通訳者会ユビキタス)

手話通訳(ミライロ)(zoomの手話ビュー使用予定)

参加費|カンパ制

お申し込みはこちら👇
https://everevo.com/event/89436

後援|全国手をつなぐ育成会連合会 NPO法人東京都自閉症協会 NPO法人全国自立生活センター協議会 NPO法人DPI日本会議NPO法人自立生活センター小平 全国障害者介護保障協議会 昭和音楽大学

協力|合同会社てくてく NPO法人風雷社中 社会福祉法人ぽぽんがぽん 社会福祉法人創思苑 合同会社ヒビノクラシ 認定NPO法人クリエイティブサポートレッツ 社会福祉法人横浜共生会 相談支援事業所ここん

主催|知的障害のある人の自立生活について考える会

シンポジュウム概要

第一部「重度訪問介護の対象拡大から10年——これまでを振り返る」

2014年に重度訪問介護が重度知的・精神障害者に対象拡大してから10年が経ちました。

この間、重度訪問介護の知的障害者の利用者数は、数は少ないものの、4倍(316→1250)となっています。ここでどのような暮らしが展開されているのか、私たちはこれまでつながった人たちから教えていただき、オンラインサロンなどでご紹介してきました。

支給量やヘルパーの確保に課題を抱えながらも、それぞれが自分らしい生活を形成し始めていることが示されてきたと思います。

今回のシンポジウムでは、この制度改革の際、中心にいらっしゃり、そして現在も制度政策に意見を突き付ける存在であるDPI日本会議副議長尾上浩二氏をお招きし、重度身体障害者の制度として使われてきた重度訪問介護の対象拡大をどのように構想され、それが実現していったのか、そして、国連から脱施設を強く要請する勧告が出される中、今後どのように自立生活を支える仕組みとしての介助サービスを(さしあたり今は重度訪問介護)構想しているのか、いくのか、というあたりをお話ししていただきます。

本会からは同様に対象拡大の制度改革の際、中核にいた岡部耕典氏が加わり、田中恵美子氏が質問をしていく形で進めていきます。

登壇者 

DPI日本会議副議長 尾上浩二氏

1960年大阪生まれ。子どもの時から脳性マヒの障害があり、小学校を養護学校、施設で過ごした後、地域の学校へ。1978年大学入学直後から現在まで46年に渡って障害者運動に関わり、バリアフリーや介護保障等に取り組む。DPI日本会議事務局長、障がい者制度改革推進会議総合福祉部会副部会長、障害者政策委員会委等を歴任。現在、DPI日本会議副議長、内閣府障害者施策アドバイザー。共著に『障害者総合福祉サービス法の展望』ミネルヴァ書房など。

知的障害のある人の自立生活について考える会 運営委員 岡部耕典氏(早稲田大学)

プロフィール:専門は福祉社会学・障害学。 元障害者制度改革推進会議総合福祉部会構成員。 重度訪問介護を使って生活をしている重度知的障害のある息子・亮佑がいる。 2002年のホームヘルパー上限問題以降、地域で自立して生活をすることを求める重度知的障害者の親の立場から障害者福祉政策を批判的に検討し政策提言等を行ってきた。編著に「パーソナルアシスタンス」、共著に「良い支援?」「ズレてる支援!」(いずれも生活書院)など。

知的障害のある人の自立生活について考える会 運営委員 田中恵美子(東京家政大学)

プロフィール:社会人を経て日本女子大学大学院にて博士取得。二度目の学生時代に介護人派遣事業ヘルパーとして重度身体障害者の生活支援、NPO法人の設立と運営に携わった。研究は障害者の自立生活、結婚・子育てなど、障害者が障害のない人と同じように地域で暮らし続けることをテーマとしている。著書に『障害者の自立生活と生活の資源』(生活書院)、『障がいを恵みとして社会を創る―近藤秀夫と樋口恵子』(現代書館)など。

メッセージ:このシンポジウムが、みなさんと、これまでを振り返り、今後を構想し、共につながっていく機会となれば!と心から願っています。

第二部「自立生活の運動はいまどこに? 支援のコーディネーターが語り合う(仮題)」

知的障害のある人の自立生活において、多くの場合、当事者と介助者や関係者をつなぎ調整する役割が必要になります。こういったコーディネートの役割は、制度として確立されたものではありません。第二部に登壇するのは、それぞれに異なる自立生活の場で、当事者の必要に応じてこういったコーディネートの実務を担っている支援者たちです。

コーディネーター(サービス提供責任者など)は、何を、なぜ、どのように行っているのか。

そして、それは第一部で振り返ったような自立生活運動の精神をどのように受け取っているのか(あるいは、受け取りそこねているのか)。

コーディネーターたちがいま現在直面している課題や問題意識を共有し、そこからどのように制度への提案や未来の実践につなげていくことができるのかをワイワイと話し合います。

登壇者

市川彩(東京都練馬区・合同会社ヒビノクラシ)

児玉雄大(東京都練馬区・合同会社ヒビノクラシ)

ササキユーイチ(静岡県浜松市・認定NPO法人クリエイティブサポートレッツ)

庭野拓人(東京都大田区・NPO法人風雷社中)

And more.

進行  水野昌和(大阪府茨木市・社会福祉法人ぽぽんがぽん)

須賀隆介・佐藤悠生 二人展

2024/12/7(土)~8(日)、14(土)~15(日)  12:00~18:00
(土日2日間を2週間)
場所 ヒビノクラシ富士見台カフェ


展示説明:
 練馬で自立生活を送りながらイラスト制作を続ける須賀さんと、アトリエグレープフルーツで制作をする佐藤さんによる二人展。須賀さんは細密に書き込んだ銃器やキャラクターのイラストを制作し、ヒビノクラシ富士見台カフェでは過去2回の個展を開催している。佐藤さんは2020年よりアトリエグレープフルーツに参加。物静かだが、制作時には心の炎を燃やし、自分の世界と向き合い制作に没頭する。
 今回、須賀さんがアトリエグレープフルーツで佐藤さんの絵を見た際「コラボしたい」「何かいいことにつながるかもしれない」と話したことがきっかけで二人展をする運びとなった。

作家プロフィール:

須賀 隆介
1998年生まれ。練馬区にて自立生活をしている。漫画教室、美術のアトリエ「アトリエグレープフルーツ」に通っていた。アニメとミリタリーが好き。日々の創作活動は、イラストや漫画を描くこと、「素材集め」のためのレポート作成。

佐藤 悠生
2004年生まれ。現在学生。
アトリエグレープフルーツに通う。アニメ、ホラーや怪談話が好き。色々なことに興味があり、気になることを題材に絵を描いている。

ハプニングの花咲く食堂「土曜日のスプーン」

 ヒビノクラシ富士見台カフェでは、毎週土曜日の12時から17時まで、食堂「土曜日のスプーン」をやっています。野菜を中心としたご飯、甘さ控え目のデザート、ドリンク、すべてスタッフが手作りする、美味しくて体に優しい料理をご用意しています。ドネーション制(自由料金制)なので、お金のある人も、そうでない人も、同じ料理を同じだけ召し上がっていただけます。
 食堂のスタッフは普段、地域でアパートを借りて暮らす知的障害のある人の暮らしを支える、ヘルパーの仕事をしています。そんなことから、子どもを連れたママ友グループや、ご近所の人、カフェ巡りが趣味のお客さんに交じって、障害のある人も居合わすことがよくあります。様々な背景を持つ人たちが、偶然にも、同じ空間で同じ時間を共にするわけですから、ハプニングはつきものです。この、ハプニングの遭遇とそれを楽しめるやりとりこそが、他の食堂では決して味わえないであろう、土曜日のスプーンの「もうひとつの美味しさ」だと思っています。
 社会を見渡すと、「障害のある人の存在が全く想定されていないお店」か、逆に「計画的に障害のある人だけを集めたお店」か、さもなくば「特定のイデオロギーの信奉者とそれに親和するマイノリティだけが居心地のいいお店」か、そのいづれかだということに気がつきます。もちろん私は、それらお店の社会的存在意義を否定したいわけではありません。実際、素晴らしい取り組みをしているお店があることも、そんなお店に救われている人がいることも、知っています。ただ、私たち自身が営むお店として考えたとき、それら既存のお店とは別のものにしようと思ったのです。
 インクルージョンやダイバシティという言葉が一般化するにつれて、社会は――それがコスパに象徴される経済効率性からであれ、功利主義的な価値観からであれ、ヘイトクライムに対抗する善意からであれ――人々から「偶然の出会い」を奪ってしまっているように思うのです。その結果、社会には自分(と仲間達)とは異なる他者が存在するという、当たり前のことに思いが及びにくくなり、ハプニングに遭遇する機会も、それを楽しむ心の余裕さえも、奪われてしまっているように思えてなりません。ハプニングの種は、「同質化が企図された計画的な出会い」の中へと押し込まれ、計画を推進する専門職の管理によって発芽を抑え込まれます。管理の網の目を潜り抜けて芽を出せば、直ちにトラブルと呼び変えられ、摘み取られてしまうのです。
 そもそも富士見台カフェは、支援の専門職に就く私たち自身が、知的障がいのある人たちと出会い直したいと思って始めました。自立生活支援の仕事では、「ヘルパー/利用者」として出会うしかなく、「支援する人/される人が固定化された関係性」のままつき合い続けていくほかにないのです。その出会いと経験も、かけがえのないものではあるのですが、それとは別の出会いから始まる、別の関係性にもとづいたつき合いも、してみたいと思ったのです。すれば、両者の関係に変化は生じるのか?小さな社会空間としてのカフェに何かが生まれるのか?そこでのケアはどのように立ち現れるのか?そもそもケアとは?支援とは?コミュニティとは? いろいろ確かめてみたいと思ったのです。

(富士見台カフェ通信・二〇二四年 春号 より)