自立生活支援

あたりまえで大切な日々の暮らし


お財布と相談しながら毎日の献立を考え、スーパーで買い物して、作って食べる。お風呂上りに冷たいものが欲しくなれば、散歩がてら近くのコンビニへ行き、公園のベンチで夜風にあたりながらジュースを飲む。週末は家でゴロゴロ過ごすこともあれば、一日中電車を乗り継いで街をブラブラすることもある。カラオケボックスで歌ったり、雑誌やCDを買いに行ったりもする。たまには遠出をして、ちょっといいご飯を食べたいから、お小遣いを節約してみたりする。

「今日の朝はパンじゃなくて、ご飯とみそ汁がいい」
「お部屋で過ごす予定だったけど、やっぱり今からお出かけしたい」
「今は気分じゃないから、お風呂は明日の朝にする」

 こんなささやかであたりまえのことも、集団処遇を前提とする入所施設やグループホームの暮らしでは、叶わぬ夢となります。ですが、重度訪問介護の支援制度を利用すれば、たとえ重い知的障害があろうとも、地域でアパートを借りて、あたりまえに個々別々の暮らしを営むことができるのです。私たちは、ひとそれぞれに形がちがう、ささやかであたりまえの暮らしを自立生活と呼び、それを広め、支えていきます。


「その人らしい暮らし」のために


2014年、日本は国際法である障害者権利条約を批准しました。それに伴い、国内法である障害者総合支援法のもとに、重度訪問介護制度の対象が拡大されました。重度の知的・精神障害者も、地域でアパートを借りて、ヘルパー(介護者)の支援を得ながら、その人らしい暮らしができる可能性が大きく広がったのです。しかし、今もなお、自閉症や重度知的障害者といわれる人の多くは、成人後も親元で暮らしています。そして、親による支援が限界を迎えると往々にして、住み慣れた地域から遠く離れた入所施設での暮らし── 箱の中へと隔離され、自由を制限される暮らし── を余儀なくされているのです。その背景には、「重度知的障害のある人が、健常者と同じあたりまえの暮らしをするなど到底不可能」という社会の思い込みもあります。しかし、障害の有無にかかわらず、誰もがいろいろな人の支えによって、暮らしを成り立たせているように、重度知的障害のある人の暮らしもいろいろな人の支えによって可能になるのです。ヒビノクラシ舎は、重度訪問介護を利用した「その人らしい暮らし」を支えていきます。


自立生活は人権


「どのようなレベルの障害であっても、どのようなタイプの障害であっても、自立して地域で暮らすことは権利である。自立生活はイコール人権なんだということを日本は理解しなければいけない」


2022年8月、障害者権利条約に基づく初の対日審査が国連により行われました。その結果、日本は多岐にわたる勧告を受けたのです。上の発言は、障害者権利委員会副委員長であり、日本の審査を担当したヨナス・ラスカス氏の来日講演(2022年9月)でのものです。「自立生活は人権」 、この意識を地域社会に浸透させ、文化として根づかせることが、私たちの役割のひとつと考えます。



自立生活の始め方